中山ゆかり「春〜プリマヴェーラ〜」(2011年)
H600 × W850 × D150mm
中山ゆかりは、紙という素材をいかしたやさしい色遣いと、登場人物たち(ただし人間は少ない)の様々な表情や動きで、不思議な、そしてあたたかな世界をつくりだすペーパーアーティスト。
たとえば、ルネサンス期の名画・ボッティチェリ作「プリマヴェーラ」を題材にした中山の作品「春〜プリマヴェーラ〜」では、樹木の精霊クローリスと、彼女に求愛する西風の神ゼピュロスの姿を、犬と鷲に置き換え、二人の性格の違い〜純真さと強引さをより強調することに成功している。そればかりではない。原画で、精霊や女神たちが身に纏っている体のラインが透けて見える透明感のある布や、そのドレープ感を、中山は透けることのない紙で見事に表現している。
さらにこの作品にはメッセージが込められていた。この作品を作り始 めたのは、2011年5月。東日本大震災から未だ2ヶ月、日本中が不安な夜を過ごしていた頃だ。中山は、「日本に震災前のような明るくて暖かな本当の意味での<春>が再び来るように」と願いを込め、生命感が沸き立つ萌黄色を基調とすることに決めたそうだ。
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左:ボッティチェリ作「プリマヴェーラ」
右:中山ゆかり作「春〜プリマヴェーラ〜」
※クローリスどピュロスの部分を拡大して比較
中山は、ウフィツ美術館で
実際の作品を目の当たりにして圧倒され、
「登場する人物が纏う透けるような布の表現に挑戦」しようと意を決したそうだ。
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中山ゆかり「妖精の庭」(2015年)
H600 × W850 × D120mm
中山曰く、作品「妖精の庭」は題材とした作品はないが、ベースのイメージはバレエの「夏の夜の夢」だそうだ。「作品を見ていて、ふっと現実を忘れるような、違う世界に一歩迷い込んでしまったような、そんな不思議な感覚を味わっていただけたら嬉しい」と微笑む。
ペーパーアーティスト
POP広告制作会社を経て、独立。その後1998年よりペーパークラフトの制作を始める。
現在、ペーパークラフト、イラストの制作を中心に活動中。
2003 年 「第18回ハンズ大賞」入選。2009年「第19回紙わざ大賞」大賞受賞。2011年「第21回紙わざ大賞」準入選/あなたが選ぶ紙 わざ大賞第2位。2015年YUMI KATSURA 50thファッションショーにヘッドオーナメント制作で参加。2016年パリ・JapanExpo、イギリス・Kokoro-Contemporary Japanese Crafts に参加出展。
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