内野敏子「鳳凰」(2016年)
H950 × W450 × D560mm

祝儀袋や贈答品などに用いられる、日本の伝統的な飾り紐「水引」。水引工芸家の内野敏子は、「子供の頃から祝儀袋や折詰のお弁当に結ばれた水引が気になり、外しては遊んでいた」と振り返る。水引工芸を始めたのは30代になってから。以来、「普段の暮らしに水引を」をテーマに作品づくりに励んできた。さらに昨今は、水引の世界を再認識していただくためにオブジェの制作にも取り組んでいる。
内野の作品「鳳凰」は、高さ約 1m。使用した水引は約 1,000 本。水引の1本の長さは三尺、約90cmであるから、およそ 1kmの水引を使ったことになる。しかし素晴らしいのは大きさではない。「鳳凰」は、強い存在感の中に、水引の編み組みの美しさが十二分に詰まっている。 そこには、あわじ結び、抱きあわじ結び、四つ編み、三つ編み、プレイティング(平編み)など、水引のあらゆる技法が編み組まれている。
鳳凰は、欧米では東洋のフェニックスとみなされ、火の鳥とも呼ばれる。 2016年、火の国・熊本で大きな地震があった。内野も被災者の一人だ。不死鳥のように復興するように祈りを込めて編み組んだという。内野 は以前から東日本大震災の被災地でもワークショップを行っていた。
願いを込めて、伝統を編み、モダンを結ぶ。そんな内野ならではの水引の新しい世界と祈りがこの作品「鳳凰」に凝縮している。

内野敏子「生かし直しのリース」(2016年)
H320 × W250 × D100mm
「現代の生活の中で保管するのは難しい結納品。新婚家庭、双方のご実家用に、 結納品の一部のパーツを生かし、新しい年を迎えるためのしめ縄(リース) として編み直してみてはいかが」という提案を込めた作品。
 
左は、内野が制作した祝儀袋。
基本を踏まえた上で
現在風にアレンジしている。


水引工芸家

1963年、熊本生まれ。武蔵野美術短期 大学卒業(油絵専攻)。広告デザイン、建築設計の仕事を経たのち、 1995 年より水引工芸、2000 年よりバスケタリーを始める。
「普段の暮らしに水引を」をテーマに、伝統の結びを使ったオリジナル 作品の制作販売、東京・京都・熊本等で個展開催。現在は企業や個人 の依頼にて作品制作の他、水引教室主宰(熊本県熊本市)、全国各地でワークショップ開催。結納品の生かし直し、認知症の方へのワークショップにも力を注ぐ。
2012 年、宮城県山元町の仮設住宅でワークショップ。2014 年、日 本赤十字社からの依頼で仏赤十字社 150 周年の記念品制作。著書に「 引 基本の結びと暮しの雑貨」(文化出版局)、「しあわせを結ぶ 贈る、 飾る 水引こもの」(PHP 研究所)等。

 Full Circle 水引工芸家 内野敏子のホームページ

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