使い終われば簡単に捨てられてしまうペットボトル。
それを、実物大の生き物や自然のリアルな情景に生まれ変わらせ、見る者を感動させるアートとして再生するのが、ペットボトルアーティストの本間ますみだ。(正式名称は「PETボトル・ソフィストケイティド・アート」)
写真右の月下美人の花びらに、「?38」という数字が印字されているのがわかるだろうか? このペットボトルが、どこの工場でボトリングされたのか? あるいはいつ製造されたのか? それらを示すための印字と思われる。
本間は「すべての作品に、もっと自然に目を向けてほしいという想いや、少しでも資源を大切にしてほしいという願いを込めた」という。
作品制作において、接着剤や塗料を一切使わないこともその現れだ。ペットボトルの貼り合わせには、ハンダゴテの熱を利用。ペット樹脂以外のものを混ぜると、資源として再利用できなくなるからだという。月下美人のリアルな花脈や、雌しべや雄しべにつけられた花粉のような加工も、すべてハンダゴテを利用して一本一本手作業で描いている。なお、展示を終えた作品は、資源回収と同様に廃棄されるそうだ。
本間ますみ「朱鷺」(2017年)H1200 × W2500 × D600mm
作品「朱鷺」は、開長1200mm。一羽に45日間もの制作期間をかけた大作。
鳥の羽はもちろん、自然には一つとして同じものはない。
本間は、1.5リットル大のペットボトル200本から一枚一枚形が違う550枚の羽を作成し、博物館のレプリカに匹敵する朱鷺を完成させた。
ペットボトルアーティスト
1992年に女子美術大学絵画科卒業、同研究科2年を終了した後、本間は動物園や水族館の設計・施工を行う会社に勤めながら、動植物の知見を深めてきた。
2006年からペットボトルソフィストケイティドアートの制作を開始。生物学見地に基づいた実物大のリアルな作品は、沼津港深海水族館、池袋サンシャイン水族館、滋賀県立琵琶湖博物館、大分県日田市立博物館等に常設展示されている。
さらに作品展も、池袋サンシャイン水族館内コラボ作品展(2014年)、沖縄県立博物館特別展「Reborn〜異彩放つ琉球の自然」個展(2015年)、石川県能美市九谷焼資料館特別展「九谷の龍降臨」個展(2015年)、新潟県佐渡市立博物館「朱鷺の舞う佐渡の自然」個展(2016年)、茨城県立自然博物館第70回企画展「サメ展」(2017〜2018年)といったように水族館や博物館を中心に開催されている。
主な受賞歴は「日本ホビー大賞」奨励賞受賞(2012年)、「eco japan cup」エコアート入選(2014年)など。