HIROKO「樹/根」(2005年)
H160 × W362 × D190mm
作品「樹/根」は、HIROKO氏が自身に対するメッセージとして、氏の思いを具現化したものだという。意志がこの<根>のようにしっかりと張っているなら、その上にはきっと枝葉を伸ばした豊かな<樹冠>が形成され、実を結ぶのではないか、という思いだ。一粒の種子が大地に舞い降り、芽吹き、か細い根も生え、やがて大地に張り巡らされてゆき、地上では空に枝を広げ、花が咲き誇り、そして果実を実らせる。ポップアップを開く一瞬で、一生を感じさせる作品だ。
HIROKO「roller coaster」(2011年)
H235 × W470 × D250mm
「私は作品において、リアリティーも大切にしています。例えばローラーコースターの作品だったら、世界中の木造ローラーコースターがどういう構造で組み立てられているのかを研究して制作しています」とHIROKO氏はいう。この作品だけでなく、HIROKO氏のすべての作品には、軽く開くだけで、 平面から複雑な立体構造物が スッと立ち上がってくる <驚き>と、180度開き終えた後の、 背筋をピンッと伸ばしたような、 どこか<凛とした佇まい><数学的な美>がある。その理由は、 一切の妥協を許さない 緻密な構造計算にあった。
左は制作過程での様々な計算を記したノートだ。三角関数、連立方程式、比の計算、 等比数列の和と等和数列、 高次関数とその因数分解......。
シンプルなようで、 その裏側には緻密で繊細な努力が秘められている。立体造形の計算に始まり、ポップアップに落としこむための構造計算、そして相互に求められた数値の整合を取るための計算を繰り返す。千分の一、時には一万分の一ミリ以下まで計算するそうだ。
180度開き終えた最終形を見た時、ほとんどの人はそれがポップアップ作品とは気づかない。飛び出すための仕組みを、HIROKO氏は仕組みで仕組みを隠しているからだ。それは彼女なりの飛び出す美学といえるだろう。
作品「tea cup ride」の開き終える途中の様子。構造を支える梁や、構造物をポップアップさせる柱が内部に組み込まれていき、巧みに隠される様子がわかる。最終形ではそのことを微塵も感じさせない。


ポップアップアーティスト

1979年東京生まれ。1990年代前半、ポップアップに出合い衝撃を受け、独学で仕組みを研究、制作を始める。2003年日本大学大学院理工学研究科建築学専攻修了(工学修士)、経済産業省へ入省。2005年第15回紙わざ大賞準大賞受賞を機に本格的に制作を再開。2007年9月退省しポップアップアーティストへ転身、活動開始。現在、各種メディアに多数出演、国内外で作品が紹介されている。見る方向を選ばない、360度から眺められるポップアップは他に類を見ない。
アーティストステートメント:開いたときの驚きだけではなく、飛び出す造形の「繊細さ」や、光がさした時に生みだされる「木漏れ日」のような「安らぎの雰囲気」と「癒しの空間」の表現を目指している。
受賞歴:第15回紙わざ大賞 準大賞、第62回全国カレンダー展 全国中小企業団体中央会会長賞、他。

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