島木英文 「斜陽館(太宰治記念館)」(2014年)
H210 × W830 × D666mm
縮尺:1/20〜1/42
畳製作:舛田ゆか 植栽製作:島木啓子
実際の斜陽館に入って、まず最初に出会い、印象付けられる「長通り」と呼ばれていた玄関から奥の米蔵まで続く14間(約25m)の土間空間の奥行き感を、どう表現するか? 今までの作品では途中に部屋や建具があり、それらの操作で遠近感を演出できたのですが、この空間には、それらの装置となるものがなく、納得できる奥行き感を得るまで、ほぼ2ケ月、12個のスタディ模型(検討用模型)を作りました。
また、この家に対する太宰の感情「風情も何もない。ただ大きいのである。(中略)おそろしく頑丈なつくりの家ではあるが、しかし、何の趣もない。」(太宰治「苦悩の年鑑」)を、空間的にどう表現するか? それが今回、自分に突き付けられた重い課題でした。実際の建物より光の表現を控えめにし、木材の着彩も黒っぽく仕上げたのも自分なりに解釈した答えです。(島木)
遠近法でミニチュアハウスをつくるとは、
どういうことなのだろうか?
上蓋を外し、島木作品の舞台裏を見せてもらった。上から覗きこめばそれがよく分かる。部屋の形はもちろん机などの調度品、そして一枚一枚の畳さえも、奥へ進むほど細くなる台形をしているのだ。そればかりではない。断面図を見ると、奥へ向かって天井は低く、床は高くなるように設計されている。さらに驚くべきことは、その斜面に合わせて椅子の脚の長さなども微妙に変えているのだ。
作品:宇野千代生家 #2「鏡の間」
上蓋を外し上方から見下ろした写真。
この作品の場合は、手前が1/20、
奥を1/24で製作している。
島木英文 「きじや」(2004年)
H430 × W900 × D650mm
着物・和装小物・人形製作:島木啓子
柳井市は、室町時代からの町割りがそのまま今日も生きており、約200mの街路に面した両側に江戸時代の商家の家並みが続いています。1984年(昭和59年)には国の伝統的建造物群保存地区に選定されています。「きじや」は、土産物を売っている店で、柳井シリーズ最初の作品です。瓦、商品作り等、すべてが初めての作業で手法の開発に時間がかかりました。この作品で奥行き感の演出、覗き込む面白さなど、次への課題が見つかりました。(島木)
遠近法を採り入れればもっと面白くなるのではないか? 島木にとって転機となった作品だ。
ミニチュアハウスアーティスト
1951 山口県下松市生まれ
1974 武蔵野美術大学建築学科 卒業
1981 同大学大学院 卒業
1998 スペイン風景のミニチュア製作開始
2000 第15回 ユザワヤ創作大賞展 金賞
2003 第18回 ハンズ大賞 入選
2004 和風ミニチュア「箱舞台」製作開始
2006 「宇野千代生家(時計の間)」より透視図法(遠近法)による製作開始