《組み木絵》とは、木でできた絵。
写真左のように少し離れて見ると、いろいろな色の絵の具で塗り分けられているようにしか見えないが、写真右のように近づいてよく見ると色合いの異なる様々な種類の木材が、一枚一枚精密に組み合わさって一つの絵を構成していることがわかる。しかもシャープペンシルの先よりも細い部分まで木が組み込んである。
《組み木絵》とは、色合いの異なる様々な種類の木材を組み合わせて一枚の絵を構成する手法。一切着色をしない数十種類の木材を、厚さ5.5㎜の板材に揃え、異なる色味や木目の違いを見立てながら、糸鋸でカットし、木の色のみで絵として組み込んでいく。中村道雄は考案者であり、唯一無二の組み木絵アーティストだ。
材料となる木は、黒はコクタン、黄はカヤ、緑はホウの木、オレンジはケヤキ、焦茶はチーク・エンジュ、赤はカリンと様々だが、それらはほとんどは捨てられる運命にあった端材だ。

中村道雄「Re.Creation/北斎・神奈川沖浪裏」(2015年)H430 × W595 mm

代表作の一つ「Re.Creation/北斎・神奈川沖浪裏」は、版画家・北斎に敬意を表した作品。北斎ブルーと呼ばれる深い藍色に匹敵する材料を探すのに半年以上かかったそうだ。また富士に降る雪のような波しぶきの部分は、糸鋸で丸く切った木を面取りし、一つ一つはめ込んでいる。さらに注意深く見ると、周りの白い部分と、波頭の白い部分が端から端まですべてつながっていることがわかる。
「一箇所たりとも失敗できなく、緊張の連続だった」と中村は振り返る。
中村のすべての作品には「着色しない、自然なままの木を素材に使うことで、自然を身近に感じ、人と自然との関わりを見つめ直すきっかけになれば」という願いが込められている。

中村道雄「凧市」(1992年)
H620× W425 mm

イラストレーターであった中村が《組み木絵》と名付けて取り組み始めて10年を経た時、秘められた可能性に挑んでみた作品。
あたかも“絵”を描くがごとくに木で組み込んで仕上げた作品は、中村の代表作の一つとなった。
細かいパーツが多く、面取りも通常のやり方は無理で、爪楊枝の先にサンドペーパーを小さく巻いて仕上げたそうだ。思わず自分の爪も磨いてしまうことも茶飯事だったという。

組み木絵アーティスト

1948年、岐阜県生まれ。1968年頃より、イラストレーターとして「平凡パンチ」等で活躍する。その後、木との出会いがあり《組み木絵》を考案。1984年、組み木絵絵本第一作『ふるいみらい』を発表。以来、組み木絵作家として絵本・時計・壁画など、一作ごとに独自の分野を切り開く。
絵本のなかでは宮澤賢治シリーズの人気が高い。とくに「よだかの星」(1987年 偕成社刊)は毎年版を重ね、45刷(2017年現在)にまでなった。また、美術館などで行われた「NHK・宮沢賢治絵画館 巡回展」などにも原画を提供している。
2008年〜2010年まで大分芸術の杜内にて「中村道雄組み木絵美術館」が開館された。2012年にはパリで個展を開催し、大成功を納める。さらに2016年には東京都西多摩郡日の出町のアトリエの隣に、組み木絵ギャラリー「おおぷなあ」を開設している。

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